ダイバーの仕事をしていて、つくづく思った事は「海は眺めるもんで、入るもんじゃない」という事でした。荒れていたり潮の流れが速い海にいると心底そう思います。
海についての恐い話をしましょう。
海のうねりってほんとにでかいものです。ちょっと大きなタグボートで、湾からちょっと出たところで仕事していた時、荒れてしまって、船より大きいうねりに揉まれた事が有りましたが、ほんとに凄いもんです。
それから、例えばレジャーボートか何かで沖へ出て、ボートの近くで泳いだとします。
ボートから離れなければ安全だろうと思うでしょ?でもね、海面から頭ひとつ出した位置から周りを見ると、無数の小さなうねりに遮られて、すぐ近くにいるボートを見失ってしまうんですよね。海面に浮いている人間には、周りを見渡す事なんて出来やしないのです。
すぐ近くにボートがいるにも関わらず、ボートが見えずにパニックになってそのまま溺れて死んでしまうのです。
ダイバーの仕事で良く有るのが、船底掃除です。船底についたフジツボだのイガイだのを落とす仕事ですね。これをやっていて起こった事故の話を書きましょう。
大型タンカーの様な大きな船の船底って、平らになっています。長さが200〜300m、幅が数十mもある平らな船底です。そこへ潜っていったら、どんな景色が見えると思いますか? 実は真っ暗で何も見えません。ダイバーの仕事の大半は暗闇の中でするものなのですが、あれだけでかい船の下では、水面からの光も届きません。
さて、一生懸命貝を落とし、ボンベの空気が少なくなって浮上しようと思ったとします。ところが気が付くと方角が全く解らなくなっていて、どっちへ泳いで行けば海面に出られるか解りません。仕方なく見当を付けて真っ直ぐ泳いでいくとします。しかし、真っ暗な中で自分が真っ直ぐ進んでいるのか曲がっているのかなど、わからないのです。もし左右どちらかの脚の力が少しでも強ければ(だいたい人間はみんなそうですね)円を描いて泳いでしまうかもしれません。直線だとしても、一番長い方向へ泳いでいるかもしれません。そんな事を考えながら、真っ暗な中を残り少ない空気で泳ぐのですから、とてつもない不安に襲われはじめ、パニックになってしまうのです。
そういう時は溶接の跡を手で探りながら泳げと言う人もいましたが、貝がついていて、溶接の跡も解りません。こういう事故で死んだダイバーもたくさん居るのだそうです。
恐いですよねぇ、、、、、。
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