ダイバーらしい仕事&なんでダイバーがこんな仕事するんだよな仕事
海洋調査の仕事は綺麗な海に潜れて、TVで見たダイバーそのもの、みたいな仕事です。
俺は良く、海洋生物調査の仕事に行きました。
だいたいは、発電所の温排水が周辺の生物に与える影響を調べるという仕事だったりしました。海図にプロットして、その地点の海洋生物を調べるんです。
南の海みたいな綺麗な所ではないけれど、それでも水が澄んでいて工事とは比べモノにならなかったっすねぇ。潜って、海藻など、何が生えているか見て、写真を撮るだけの仕事です。それでも、飛び込んで潜って、調べて、上がって移動してまた飛び込んで、という繰り返しなんで、結構疲れましたっけ、、、。
この仕事をするために、海藻の名前を随分勉強させられました。見て名前が解らないと調査にならないですもんね。
夜は新鮮な海のモノをたくさん食べられたし、ちょっと海が荒れると毎日待機で遊んでいられたし、良い仕事でした。
これと反対に、一番きつい仕事は「はつり」でした。
道路工事なんかで良くやっている、先の尖ったドドドドッっていう機械でアスファルトやコンクリートをぶち壊しているのを見たこと有るでしょう?あれを海の中でやるんです。
水中では、あのコンクリートブレーカーの猛烈な震動をモロに受けるので、衝撃で吐きそうになるんですよ。つうか、慣れるまではマジ、吐きながら仕事してましたけど。
で、ある日、八王子の現場へ行ってくれと言われて行きました。
「八王子?そんな所に海も何も無いが、、、」と思いながら行ってみると、
高架橋の支柱を建てる穴を掘る仕事でした。
直径1.6mの縦穴を掘るのです。こういう穴を掘る工事の場合、地下水が出てしまう事が良く有ります。通常はポンプで汲み上げて工事するのですが、汲み上げてしまうと、周辺の地下水の水位が下がってしまうため、水中の工事になる場合が有るのです。
直径1.6m深さ12m という、恐ろしい穴を掘る仕事でした。狭い穴なので、機械を使う事が出来ず、なんと、なんと、手で掘るという恐ろしい仕事でした。
狭い穴の中、身体をエビの様に曲げた姿勢で、手で掘ってはバケツに土をいれてロープで引き上げて貰うという、とてつもなく原始的な作業なのでした。水の中ではシャベルのような道具は殆ど役に立ちません。掘った土は水に舞ってしまうからです。
レギュレターは泥で詰まり、口の中は泥だらけ。腹筋背筋がガチガチに筋肉痛で、手はすりむけるという、大変悲惨な毎日でした。
同僚のダイバー(この人は、元々レジャーでダイビングをしていたので、綺麗な海に潜れると思ってダイバーになった)が、工事現場用のヘルメットを被って竹箒で掃除しながら「なんでダイバーがこんな仕事しなきゃなんねーんだよ」って怒ってるのを見て、全身の力が抜けて笑いが止まらなくなったのを良く覚えています(^^;
いろんな仕事が有るもんですね、、、。
大変貴重な体験をさせて貰いました。
しかし俺、工事現場で働く人達は、ホントに大好きです。
特に海の工事現場の男達は、身体を惜しまずどんどん仕事をするのが心地良いです。
きついけど家族の為に働き、するべき事があれば率先して身体を使い、動きがてきぱきしていて、でも優しくて、ユーモアが有って、ちょっとおばかで、、、、そんな男がとても好きです。
この辺の美学はサン・テグジュペリの言う美質と同じだな、と思うのです。
そんな心地良い美しさの中からふと目を移した時、
電車で我先に座ろうとする人々のなんと愚かに見える事か、、、。
疲れているからとか、同じ料金を払っているんだ、俺にも座る権利が有るんだとか、
とてもじゃないけど、そんな事思いたくもない、、、、。
自分の権利など、主張したいと思いたくもない。
自分を犠牲にしても人の為に何かをしてしまう人やバカ正直な人でありたいと思う。
手練手管や権謀術数がなんとくだらなく見える事か。
意地や偏見や反目を持つ人間のなんと小さく見える事か。
やっぱり俺は宮澤賢治の雨ニモ負ケズの詩がしっくり来るのです。
丈夫な身体を持ち、欲は無く、決して怒らず、人の為に汗を流す、、、、。
ブルーカラーの男達に乾杯!
(俺はそんな工事現場にいたもので、なんだかあっちこっちの方言が移ってしまって、自分の話す言葉がどこの言葉だかさっぱりわからんような事になってます(^^;)
(おしまい)
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